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12月の半ばからいらっしゃったのは70代の女性で、突然物が二重に見えてしまい眼科に行くと「外転神経麻痺」と診断されたとのことです。左の眼が外に動かず困っており、眼科でも特に治療法もないとのことで私の施術所にいらっしゃいました。既往歴に右の顔面神経麻痺、高血圧、そして数年前のお正月の前に私の処で四十肩の施術を受け、「これで少し掃除ができそう」と帰っていったことがありました。
指を患者さんの顔の前に一本立て、左にスーッと動かして目で追ってもらうと、左目はびくとも動きません。そして立てた一本指も二重に見えるそうです。ものが二重に見えるため外を出歩くのもとても怖く、やっとのことで私の処にいらしたとおっしゃいます。 早速、お身体を診るとC7からD4あたりまで面白いぐらい左にずれています。真っ直ぐ立っていると顔が自然に左に向いてしまいます。私はこの外転神経麻痺というのはいままで診たことがありませんが、とりあえずいつも通り施術を始めました。 うつ伏せで骨盤と背骨を整えます。長野式の目のポイントのD4,5の左の際の圧痛をとり重点的に左にずれている上胸椎を誇張法で操作します。ところがこの上胸椎、なかなかきれいになってくれません。いい加減がんばったのですが、このずれがあまり改善しないまま仰向けでもう一度骨盤、帯脈を天柱、風池、C2をゆるめ、頸椎と後頭骨、側頭骨、そして顔面を誇張法で調整しました。一回目の施術が終わるとほんの少し左に左目が動きますが、患者さんは実感がまるでないそうです。3回同じ操作をすると少し左目が動くようになって、家族の方からも「動いているよ」といわれるようになったそうです。 もっと早くなんとかならないかな、と思い色々本を広げているも、外転神経麻痺の症例が載っている本がありません。唯一、首藤先生の最新の著書に柳谷風池が外転神経麻痺の効果あり、と書いてありましたので、柳谷風池を入れてみることにしました。 4回目からは骨盤、背骨などは今まで通りで施術し、光がまぶしくなったとおっしゃるので橋本先生の目のポイントと麻痺をすこしでも改善させるべく柳谷風池を入れてみました。面白いことに橋本先生の目のポイントの圧痛をとると、目の周りが軽くなったとおっしゃいます。両足の圧痛をとり、次に柳谷風池を片手で操作しながら、目の周りのサン竹や魚腰、糸竹空、四白などの圧痛をとっていきました。すると少しずつ目が左に動くようになってきました。しかし、上胸椎の左のずれと頭の左への傾きは今一つ変化ありません。 また、色々調べていると「新正体法」という私の仲間が出版した本に脳神経と経絡の関係が書かれていて、外転神経は小腸経と相関すると書かれていました。確かに、長野式ではC7周辺は小腸経とかんがえますし、肩甲骨の上角にも圧痛があります。 5回目からは小腸経のラインをさぐり、圧痛をとっていきました。前谷、支正、天宗、肩外ユ、と圧痛をとっていくと今度は上胸椎の左へのずれが随分改善し、頭の左への傾きも改善しました。目も随分右目の動きについていきます。 同じ操作をもう2回して7回目にいらしたときには「本当によくなりました」と患者さんからおっしゃられました。目の動きをみせていただくと右と同じように動き、立てた指も二重に見えなくなったとのことです。それから2週間に一度にしてきていただいておりますが、もう普通どおりに見えるようになったとのことです。 この脳神経と経絡の考え方は大変おもしろいものでした。それを応用して小腸経をゆるめるようになってグンと改善した感じがします。また、九州の向野先生というお医者さんが開発した「経絡テスト」に小腸経に負担がかかっている首の動かし方がありましたが、患者さんに首をあれこれ動かしていただいて一番嫌な感じがするのはなんと小腸経に負担のかかっている動かし方でありました。この二つの一致に施術をしながらわくわくさせられました。 結構いまどきには珍しいとてもかわいいおばあちゃんだったので、なんとか良くしてあげたかったのですが、治療期間は2カ月弱で元に戻ったので私もとてもほっとした症例でした。
by kaiondo102
| 2011-02-15 23:33
| 臨床雑記
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Comments(8)
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at 2011-02-17 11:14
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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kaiondo102 at 2011-02-17 23:16
キー子先生の第一巻の方に書いてあります。そして、圧痛を取る時は肝経の流れにそって皮膚を動かす形でとっています。橋本先生の目のポイントは肝経上で曲泉から上へ3分の1のところです。
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at 2011-02-17 23:47
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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鍼灸師見習い
at 2011-02-18 21:00
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こんにちは、
先生のブログを読ませて頂いて、皮膚の重要性に気がつき色々試していました。 そして、この間自分も指での経穴の刺激がうまくいきました。 大腰筋の筋力低下を長野式のお血処置を応用し、さらに指での刺激により成功しました! 今まで皮膚を動きやすい方向に平面でズラしていましたが、なかなかうまくいいかず悩んでいました。 そこで靱帯性関節ストレインの本からヒントを得て、捻りを加えたら効果が倍増しました。 これはいいですね。単なる筋肉のコリにも応用させて頂いてます。
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鍼灸師見習い
at 2011-02-18 21:01
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それと、古典で書かれている「気至る」 とは皮膚の弾力性がよくなる事を言ってるみたいですね。
そう考えると、誇張法などの皮膚への刺激法と共通点が見えてきますね。 先生のお陰ですありがとうございます。
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kaiondo102 at 2011-02-18 23:22
鍼灸師先生
素晴らしいですね。最近は操体法の先生や理学療法の先生も皮膚の施術を提唱しているそうです。また、小児鍼なんかも柔らかい皮膚、固い皮膚という形で診断してそれから治療をすると聞いたことがあります。 「気至る」とは皮膚の弾力性のことなのですか。勉強になりました。今後も何か発見がありましたら、教えて下さい。
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at 2014-12-01 00:11
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ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
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kaiondo102 at 2014-12-01 23:56
西尾先生
私は直接、福岡の先生は存じ上げませんが、心当たりを少々あたってみます。解りましたら先生にこの場ではなく、直接メールをさせていただきたいと思いますので、kaiondo102@yahoo.co.jpまで先生のメールアドレスを送っていただければ幸いです。
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