痛みの出ている部分とは全く関係なさそうなところを施術してその痛みがとれるという体験は、あらためて身体は繋がっているということを感じさせてくれ、かつ東洋医学の理論の正しさを実感出来る瞬間でもあります。
ではどうして肝臓と脾臓のリンパポンプが四肢の痛みに効果があるのでしょうか?
まず考えられるのが横隔膜への影響です。肝脾ポンプは基本的に私は両期門、だいたいR9の肋骨の下に母指を当てポンプをします。この部分はちょうど横隔膜の前側の付着部であるとのこと。圧痛があっても痛くないようにポンプしていると、少しすると圧痛が無くなる事を考えますと、このリンパポンプはまず腹筋を緩めてから横隔膜まで緩めていると考えられるます。この横隔膜というのは呼吸を介して生命の維持に関わるだけでなく、体幹を安定させることに寄与するため四肢の運動を助ける働きがある、と何かの本で読んだことがありますので、この横隔膜を緩めて機能を向上されれば、そのお蔭で四肢の痛みが軽減してくれるのでしょう。
ロバートフルフォード先生曰く、ショックやストレスで横隔膜が上方にめくれあがってしまうことがあるそうです。その時は横隔膜をリリースすると今度は腹斜筋まで緩み呼吸が深くなるとのこと。腹斜筋イコール長野式では帯脈です。長野先生は帯脈への鍼でありとあらゆる部分の痛みとっておられました。横隔膜がゆるみ、帯脈がゆるむことで長野式の帯脈治療の効果に重なるところもあるのかもしれません。
数年前のクリスチャンフォッサム先生の講義では確か横隔膜の脊椎側の付着部がD11であり、そこは腰方形筋と大腰筋の付着部でもあり3つの筋肉が重なり合っている、と聞いたことがあります。ということは横隔膜への施術は腰痛だけでなく下半身にトラブルを作り出すことが多いこの腰方形筋及び大腰筋を間接的に緩めることも考えられます。
また肝臓をポンプすることは鬱滞しやすい肝臓の中の血液の動きをスムーズにすることで肝臓を軽量化し、右肩や右の背中、右首への負担を軽減させるだけでなく、右の骨盤へかかる荷重も軽くしてくれます。さらに東洋医学的に考えれば肝臓は靭帯、脾臓は肌肉(筋膜及び筋肉)を司る為、肝脾ポンプによって肝臓と脾臓の機能が改善し、靭帯や肌肉の状態も併せて改善すると考えられます。
シンプルイズザベストという言葉が思い浮かびますが、リンパポンプのような本当に簡単な技法で幅広い効果を得ることが出来るは非常にうれしいことであります。